teacup. [ 掲示板 ] [ 掲示板作成 ] [ 有料掲示板 ] [ ブログ ]


スレッド一覧

他のスレッドを探す  スレッド作成

新着順:94/1745 記事一覧表示 | 《前のページ | 次のページ》

もっと文芸批評を。

 投稿者:永野悟(群系) 9345  投稿日:2018年10月31日(水)17時09分57秒
  通報 返信・引用 編集済
      最近、人から送られてきた文芸雑誌二つを味読している。一つは「民主文学」、いま一つは「てんでんこ」という標題のついた文芸同人誌である。
   「民主文学」は日本共産党系の文芸誌だが、よくこのご時世に、今に継続しているなと感心(何せ左翼と文学の二つ、今時の若者には死語に近いもの同士の取り合わせですものね)。特に今回の11月号は、《特集  明治百五十年》と題して、明治以来の作家に焦点を当てた評論特集を組んでいる。五人の文学者を取り上げているので、まずそれらを紹介してみよう。
・広津柳浪の悲惨小説を読む                                                             田中夏美
・反戦の意志が脈打つ木下尚江「火の柱」                                       久野通広
・田山花袋ー名もない人の歴史を書く「朝」と「東京の三十年」    尾形明子
・徳冨蘆花「黒潮」「謀叛論」ー自家の社会主義                             下田城玄
・「明治」を漱石はどうとらえ、表現したかー「明治百五十年」と漱石     和田逸夫

    取り上げられた作家名とサブタイトルで、いかにも「民主文学」だ。まず、広津柳浪と明治の「悲惨小説」であるし、「反戦」の木下尚江だし、「名もない人」に心を寄せた田山花袋であるし、「自家の社会主義」と名打った徳冨蘆花、そして、「明治」の夏目漱石である。
   創作中心の雑誌かと思われたこの雑誌が、これだけの批評をこのご時世に掲出していることに、大いに慶祝の意を寄せたい。
    広津柳浪など文学史の知識で知るくらいだったが、名前だけは知っていた作品の内容がわかった。「変目伝」「黒蜥蜴」、そして傑作「今戸心中」が描かれる。遊里の女が心中したのは恋仲の男ではなく、女に入れあげていた古着屋とであった。女の絶望に同情した古着屋の絶望が心中へと帰結する道行きはいわゆる悲劇の結構となっていよう。当時から、鴎外・露伴・緑雨の「三人冗語」で話題になっただけある。柳浪後期の傑作「雨」は、芝浜松町新網、すなわち、当時の東京の三大貧民窟の一つが舞台だ。ここには長雨に降られて仕事にありつけない者と、親のため身売りに行く娘が描かれているが、こうした柳浪の深刻小説が人身売買や貧民窟といった社会小説にまで届かないのは、論者の言う通り、「今戸心中」で成功を収めた作者の「人物の言語と挙動のみを書く主義」が、そこにまで筆致を及ばせなかったということもいえよう。
   ちなみに論者が上げているように、三大貧民窟は、横山源之助の『日本之下層社会』(1899年)にあるもので、それらは四谷鮫ヶ橋、下谷万年町、芝新網だった。また松原岩五郎の《最暗黒之東京』(1893年)には、その貧民窟の仔細が描写されている。
  http://www.minsyubungaku.org/minbun/
 
 
》記事一覧表示

新着順:94/1745 《前のページ | 次のページ》
/1745