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携帯小説ならぬ掲示板小説

 投稿者:草原克芳  投稿日:2017年 8月 5日(土)20時35分21秒
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                   "再発掘"しております。




--------------------以下は第一回目のサンプルです--------------------------------------------------------


『月下美人』〈1〉 谷口葉子 《カプリチオ ARCHIVE》より


                          1999年2月「カプリチオ」10号掲載





月下美人の花は、夏の夜の二時間しかいきない。
白いぼんぼり状のつぼみを茎のところでもぎとり、室内で水なしでつるしても、その夜のたったの二時間をなんともいえない高貴な匂いを発散して、もよもよもよと生きる。

もよもよというのは、ぼんぼり状の花びらの上にかかる数本の茶色の筋が、白い花びらとともに動きながら、大輪のばらとも牡丹ともちがうふぜいで咲くのである。
美しいといってもいいのだが、どこか怪しくもある。
この花を鍵状に折れ曲がった茎のところで切って、初めて手渡してくれたのは、長いこと顔は見知っていても名前の知らないあの男だった。


 湘南の海辺近くにある父親の残してくれた別荘へ私が行くのは、このところ夏と冬の数日である。
まだ若いといっていい三十代、四十代のころは友人たちにも声をかけて、この別荘は役にたつ賑いのセカンドハウスだった。
スペイン語専門の翻訳業を仕事にする夫のいち矢は、この別荘を仕事場として、なかなか東京のマンションの部屋へ帰らなくなった。

私は私で夫に出会う前から父親の経営するブティックを手伝っており、父親が死んでから責任のある激務に追われ、東京の部屋は私の住い、湘南の別荘はいち矢の住いといったくわけがぼんやりとできていったのも事実だった。

思いもかけないことに、五十歳になってすぐいち矢を亡くした私は、急だったこともあって衝撃から立ち直れず、ましてやいち矢の暮しの匂いの残る別荘へ、足を運べなかった。

                                     (続く)



『月下美人』谷口葉子 第一回目
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『月下美人』 二回目以降はこちらから
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