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海峡派139号

 投稿者:高岡啓次郎  投稿日:2017年 7月 4日(火)08時51分21秒
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  若窪美恵さんの『泰子、河内に吹く風のように』
 先回は鰻屋に勤め始めた男性が主人公の小説を面白く読ませてもらったが、今回はまったくおもむきが違うもので、死人が生前を回顧して語るという内容。自由自在に素材を切り取っていくのは豊かなイマジネーションの持ち主だからなし得るのだろう。主人公である沼田泰子は夫がまかされた巨大ダムの建設の重責を影から支える役割を担う。八幡製鉄所の土木部にいた沼田尚徳が泰子の夫だが、産んだ7人の子どものうち5人までを病気で失い、本人もダムの完成を待たずして亡くなってしまうという実在する人物であろうと思われる。
 これを読んで私はこの場所を見てみたいと思った。五つの個性的な橋に囲まれた公園のように美しい沼田貯水池と、そこのかたわらに刻まれた記念碑をぜひ見たいものだ。書き方は平易にして気取りがなく40枚くらいの短編を無難にまとめているが、なにせ主人公や夫が舐めた辛酸はこの長さでは書ききれず、細部の苦悩をありありと描くには最低100枚は必要であろうと思う。
 登場人物は少ないからあえてシナリオみたいに会話の冒頭に名前を入れなくてもいいと思うが、作者には何か意図があったのかもしれない。この作品をたたき台にして雄大な大河小説として手がけられてはどうだろうか。もうすでに誰かが小説にしてしまったかもしれないが、若窪さんならではの力量でお書きになったら読み応えのある作品に仕上がるのではないだろうか。
 
 
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