teacup. [ 掲示板 ] [ 掲示板作成 ] [ 有料掲示板 ] [ ブログ ]


スレッド一覧

他のスレッドを探す  スレッド作成

新着順:191/1701 記事一覧表示 | 《前のページ | 次のページ》

「弦」100号記念号 長沼宏之「ぎんなん」のサラリーマン世界の巧みな人間模様の描写、市川しのぶ「鬼夜叉」の戦慄すべき戦争への怨嗟と怨念

 投稿者:根保孝栄・石塚邦男  投稿日:2017年 4月22日(土)03時20分58秒
  通報 返信・引用 編集済
  ・書き残した佳作について触れたい。名古屋の同人誌の雄の一誌「弦」の100号記念号である。

・長沼宏之「ぎんなん」は、人事異動が四月が恒例というのに、半端な九月に人事異動が行われ、勝野潤一郎は営業の係長から異例の総務課長として昇格赴任となった。特別仕事が切れるというわけでもないと自分では思っていたのに、三十七歳の若さで課長職は、二、三年早いもので自分でも意外な気がした・・・。そんな潤一郎からサラリーマン世界の人間関係を描く作品なのだが、人物の個性が浮き彫りに描けているところが読みどころだろう。なかなか巧みな筆筋である。

・市川しのぶ「鬼夜叉」は、終戦後の混乱期、両親は名古屋で働き、幼い小夜は田舎の祖父母に預けられて大きくなった。実家は母の末の弟が継ぎ、さらにその弟の息子の代になっていた。その子が隣の土地に新しい家を建てたので、旧家を解体することになり、残った遺品を片付けるために実家にやってきた小夜。小夜は、片付けものをしながら実家にまつわる人々の過去を回想する・・。五人兄弟のうち、三人の兄を戦争で失い、たった一人の姉まで、間接的に戦争中死なせてしまったオトは、どんなに戦争を憎んだろう」と小夜は回想する。学徒出陣となったのに、戦地に向かう途中で行方不明になった男がいた・・・。彼は故郷に辿り着き、屋根裏に身を隠していた・・・。自分で隠れたのか、父親が隠したのか・・そんなことが残っていた記録から薄々分かって来る。そして、山に隠れた男は、伝説の夜叉となって村の子供たちの童歌に歌われるようになった・・・。この小説には、戦争の怨念を引きずる世代の詩情が籠っていて胸が震えた。この作者はいつも秀作、佳作を読ませてくれるベテランとして名があり、この作品も読者の期待を裏切らない秀作であった。

  ・海溝の底を歩みて故郷へ還りくる霊今も居るらし  石塚 邦男

  郵便ー463-0013 名古屋市守山区小幡中3丁目4-27  中村賢三方 「弦の会」

           電話・ファクス 052-794-3430
 
 
》記事一覧表示

新着順:191/1701 《前のページ | 次のページ》
/1701