teacup. [ 掲示板 ] [ 掲示板作成 ] [ 有料掲示板 ] [ ブログ ]


スレッド一覧

他のスレッドを探す  スレッド作成

新着順:194/1701 記事一覧表示 | 《前のページ | 次のページ》

「法螺」74号(交野市)  問題作は、高橋惇「合理化の裏で」、達者な小説作りの西向聡「花束」「海鳥」の短編の佳作

 投稿者:根保孝栄・石塚邦男  投稿日:2017年 4月15日(土)23時46分52秒
  通報 返信・引用 編集済
  ・この雑誌、数年前に、昨年文芸評論同人誌「群系」が受賞した四国の三好市主催の富士正晴文芸大賞を受賞している。年二回発刊で数人のレベルの高い書き手だけで運営している同人誌だが、主宰の西向聡氏はなかなかの人物で、枚方文学の会をまとめているのは敬服に値する。

・曽根登美子「家庭の事情」は、息子の洋一夫婦が離婚したと事後報告を受けた淑子は、納得できない。孫の運動会に老夫婦そろって応援に行ってから二か月も経ってないのだ。こんな大切なことを自分たち両親にも相談せずに決めた息子たちに淑子は不満なのだ・・。そんな話から始まる短編は、現代の世相を見事に切り取っている。

・高橋惇「合理化の裏で」は、八十にもなると、勤めた会社のOB会に出席するのも億劫になる。それでも働き盛りの頃務めた会社の同僚は懐かしい。OB会で「課長、お久しぶりです」と声をかけてきたのは、特別の思い出のある北川だった。それは、人員削減問題にかかわったときの気の重たい思い出とかかわる男が北川だった。その昔の出来事とは・・という話であるが、組織と人間の板挟みで苦渋の決断をせざるを得なかった人間模様は、企業内小説という範疇から抜け出た人間の条件にも迫る問題作。

・高山順子「風立つ日々ーマリオ・②」は、マリオという子供の成長と生活を地道に描いた連作もの。二世の子供が肌の色が違うために何かといじめを受ける・・・だが、それを克服して得意のスポーツを生かして成長する少年・・・という異色の物語。

・井藤藍「赤いコート」は、中学生のとき貴志が病気になり、空気の良い田舎に一家で引っ越してきたのだが、父が亡くなり、母は弁当屋で働き始めた。短大を卒業した姉に比べ、朱実は定時制高校を卒業してやっと宅配会社に就職、プログラマーになることを夢見る弟の貴志は・・・そんな一家の貧しいが懸命に幸福を求める姿を描く。

・西向聡「花束」は、フェリーで夫人が甲板から散骨をする様子を目撃した話を嶋田という旅行者の目線から描写する作品であるが、全国を自転車で旅行している作者が、旅行先の風土をヒントにすかさず上出来の作品に仕上げる勘の良さが光った。
・西向聡のもう一作「海鳥」は、海で遭難死した井上と離島の中学校で同級生で、共に水産高校に進学、別れ別れに就職した二人は偶然、海峡の町の居酒屋で再会した・・・。その井上が亡くなり、井上の妻から手紙をもらったのが五年前、一度訪ねようと思いながら日は過ぎていた・・その井上にまつわる話は、人生の機微に触れる佳作に仕上がっている。

     ・貧しきを健気に生きし子供らの輝く時代に光当てたる  石塚 邦男
 
 
》記事一覧表示

新着順:194/1701 《前のページ | 次のページ》
/1701